魔法少女リリカルなのはstrikers 序:空に翔る橋 (1−7)

 本日は特に書くことも無いのでここは一気に載せときます。
 記録したいことが無い人生とはどうよって感じなのですが。
 まあそれは置いといて、今回のところは事件の説明です。といっても情報が少ないので触りに留まるわけです。
 第2章で大体のことが説明されます。第3章からは話の本筋とは関係ないのでありません。
 3人称視点に切り替わって、話が進みます。
 相も変わらず、テンポの悪い文ですがどうかお願いします。





 「もう大丈夫か、ヴィータ
 廊下を二人で歩きながら、シグナムが尋ねる。ヴィータは桃子に抱かれたまま、泣き疲れて眠ってしまったのだ。ヴィータにとって、いくら仲間とはいえ、こんな姿を見られたのは少し恥ずかしかったようである。
 「うっせーな、問題ないって言ったろ」
 ヴィータは顔を上げ、シグナムを見て、少し強い口調で彼女に言う。
 「そうか、それならば問題はない」
 シグナムがあっさりと答える。
 「ところで、何処へ向かっているんだ」
 「会議室だ」
 「会議室?」
 「そうだ、シャマルからの連絡で、なのは自身の問題とは別に、気になることがあると、マリエルから言われて、後で説明をするから集まろうとのことだ」
 「それならなのはの両親も連れてこなくていいのか」
 ヴィータは事件のことであるから、なのはの両親も関った方がいいと考えた。だが、シグナムは即座に否定をした。
 「問題はないとのことだ。なぜなら、なのはの父上や母君とは直接的に関係しない件、すなわち魔法技術関連の問題であるからだ」
 「それなら仕方ないか」
 あっさりとヴィータは得心する。魔法関係の問題はあの人達にとって専門外だ、だから説明しても分からないだろうし、本人達もそれほど気にはしないだろう。
 「あとテスタロッサとユーノも呼んだ。彼らにも話しておきたいことであるらしいからだ」
 「そっか。あいつらはなのはの見舞にもう行ったのか」
 「お前が寝息をたてていた間に済ましてある」
 シグナムはヴィータに少し目線をやりながら答えた。ヴィータがちょっと顔を下に向け、赤くなって頬を少し膨らませているのが見えた。
 「ほら、もう着く」
 気づいてなさそうだったヴィータにシグナムが声をかける。
 「ん、あっ、ああ」
 ヴィータが前に目線をあげたところ、そこには少女と少年が一人ずついた。
 「ヴィータ……」
 そのうちの一人、金色の髪を二つに束ねて、後ろへなびかせている少女、フェイト・テスタロッサが声を漏らす。
 「フェイト……御免……」
 ヴィータが謝る。彼女はなのはの親友だから、とても心配したのだろう。迷惑をかけたことを詫びる。
 「そんな……、そんなことしないでいいから、ヴィータ
 フェイトが返す。なのはの事故はヴィータ一人だけの責任じゃないんだと彼女も分かっていたから。むしろ彼女は自分に問題はなかったかと考えていた。なのはにとより過ぎることはなかったかと考えていた。
 「ユーノ、マリエル技官は到着なされたか」
 フェイトの隣にいる少年、ユーノにシグナムが問いかける。彼はP.T.事件において、なのはと共に管理局に協力をした少年である。その間なのはと常に共にあった。その後もなのはの戦友であり、親友の一人である。
 「いや、まだです。しかし、移動時間を考えると、もうしばらくで到着すると思います」
 「そうか」
 ユーノの予想通り、マリエルはその後少しして、シャマルと一緒に到着した。
 
 
 「さて、早速本題に入らせてもらうわね」
 小さな会議室に入り、皆がそこの椅子に腰掛けたのを見て、マリエルが言う。その間にシャマルが準備を行う。準備が整い、マリエルが話し始める。
 「では、まず、この音声を聞いてほしいの」
 「音声?」
 フェイト・ヴィータ・シグナム・ユーノが一斉に声をあげる。
 「映像は残っていないのか?」
 ヴィータが質問をする。本来デバイスに記録映像が残されていてもおかしくないはずだ。今回の場所は管理局の監視地域から外れているために管理局主導の映像は残されていない。しかし、そんな時であってもデバイスを用いれば、何らかの映像は残されることになっている。その映像がないというのはどういうことだろうか。
 マリエルがそれに対して答える。
 「レイジングハートのほうに問題が起こって、どうやらその映像を残すことが出来なかったみたい。残すことが出来なかったという原因はなのはちゃんの体調の件を除いて、2つほどあるんだけど、まず1つ目はレイジングハート自体の問題ね。彼女はミッド式のインテリジェントデバイスでしょう。インテリジェントデバイスは元来とても繊細なシステム。そこに開発途中のカートリッジを載せた。そのことによって、レイジングハート自身も気づかないバグが発生した。聞いてもらえれば分かるんだけど、レイジングハートが機動停止に陥った要因の一つがこれ。後もう一つ、最大の問題があるんだけど。それはまず聞いてからね」
 「分かった」
 シャマルを除く4人が返事をする。
 声が流れ始めた。なのはの戦闘記録が音声として部屋の中に流れる。そこにいる誰もが耳を澄まし、聴いている。
 「えっ!!」
 最初に声をあげたのは、シグナムとヴィータだった。しばらくして、フェイトも気づいたようだった。
 打撲音が鳴り、そこからの記録は途切れていた。
 「どう、分かったかしら」
 ユーノを除く全員がうなずいた。彼は魔法技術を体系的に勉強することはなかったので、その存在を知らないようだった。
 「まずは魔導機械兵器、そして……もう一つはAMFだな」
 シグナムが静かに言う。マリエルは顎を下げて、肯定し、再び話し始める。
 「そう、今回の問題は二つ。一つは機械兵器の存在。これ自体はそれほど重大なことではないんだけど。昔から、そう古代ベルカの時代からあったものだから。ユーノ君もこれは分かるでしょう」
 ユーノがうなずく。マリエルは更に続けて、
 「問題は後者の方、つまりAMFの方ね。AMFとはAnti Magilink Fieldのこと。簡単に言ってしまえば、構成した魔力エネルギーを分解してしまうという性質を持った防御技術の一つね」
 「それがあるとどうなるんでしょうか」
 これに対して、シグナムが答える。
 「単純に言えば、魔法を構成することが出来なくなる。魔法が使えなくなるということだな。もっとも、それに対処する方法はあるし、そもそもよほどの高濃度AMFでもなければ、全くつかえなくなるということはないだろう」
 「そうですか、ありがとうございます」
 ユーノが礼をする。シグナムは続けて前のフェイトに話しかける。
 「音声からすると、なのははこれを知らないのだろう。ところでテスタロッサ、お前は知っているみたいだが、どうなんだ?」
 「はい、現在確立している魔法体系は一応、リニスに全て教わりましたから。でも、一度しか聞いたことはありませんでしたし、実戦の場で見たことは一回もないです。」
 フェイトは答える。その理由をヴィータが言う。
 「それは仕方ないだろうな。今の時代に入ってから、ミッド式の魔法体系が一般的になった。AMFはミッド式の魔導士には天敵だし、ミッド式の魔導士が使うような代物でも無いからな」
 「わたし達がこうやってベルカ式の魔法を使うようになったのも、一つはこのAMFにあったの。あの時代の記憶はあんまり無いけど、AMFを使う機械兵器とか、AMF下における作戦行動を確実に実施するには、それなりの魔力を一度に発現することが必要だったから」
 シャマルが喋る。AMFはフィールド内での魔力攻撃をある程度分解させる効果がある。それに対して、規定値以上の魔力を用いるか、魔力を物理攻撃に転換させるかという2つの方法がある。この2つを実行するために、一瞬で大きな力を発揮すること、物理的ダメージを与えることを重視するベルカ式が台頭するのは当然のことだった。
 「それにしても……、なのはは凄いね。あんな急に現れた敵に対処して、知らない技術に対応するなんて」
 フェイトが嘆息する。マリエルがもう一つ図表を示しながら答える。
 「そうね、さすがなのはちゃんだと思うわ、これを見てくれれば分かるんだけど」
 「これは?」
 「レイジングハートの魔力使用チャートね。ここを見てくれれば分かるんだけど、まずこの地点で使う魔力が大きく跳ね上がっているのが分かるでしょう。先ほどの声からすると、彼女はまずプロテクションを大きく展開させて、フィールド効果の減退をさせた。そしてそれに魔力を注ぎながら、もう一方の手で魔力を溜め、アクセル・シューターとして相手へと放出したのね。その後やられちゃったけど、さすがの戦闘センスだと思うわ」
 一同が頷く。
 「ところでシャマル、なのはは一つ落としたみたいだったが、その残骸は回収できたのか?」
 シグナムがシャマルに問う。シャマルは下を向いて少し残念そうな顔をして答える。
 「出来ればしたかったんだけど……、回収を試みるために現場へと人を送ったところ、そのときにはもう無くなっていたから……ごめんなさいね」
 「それなら仕方ないよ、シャマル。でも……無かったってことは回収した誰かがいるってことだよね。風に飛ばされたり、時間が経過すると消滅したりするものでも無いんだし。一体誰が持って帰ったんだろ……」
 首を傾げながら、フェイトが疑問を呈する。ユーノがすっとフェイトへ顔を向けて、それに答える。
 「多分、裏に誰かいるんだろうね。それも相当に高度な技術を保持しているのかもしれない」
 「そうなんだ……、どうにかしてその人を特定できないかな」
 「うーん、そこはなあ……」
 皆が考えるもなかなか妙策が出てこない。
 「申し訳ありません。マリエルさん、シャマルさん、もう一度始めから事件の概要を教えてくれませんか。どうしてあの場所に行くことになったのか、から全部です」
 「ええ、いいですけど。ユーノくん、もしかして何か手がかりが」
 「それなら、最初のほうだけはあたしも分かるから、あたしが言おう」
 「はい、ヴィータさんもお願いします」
 …………
 「巨大な魔力収縮とその後の爆発、瓦礫と残り火……。そして見たことも無いような機械兵器か……。もしかしたらロストロギアも扱っているかもしれない」
 「その可能性は否定できないな。機械兵器を使うという時点で相当な技術力を有しているから」
 「あと、魔力収縮とその後の爆発についてですが、それだけの魔力の発するものといったらやはり、ロストロギアの可能性が高いですね。永続的に発せられたものではないのが一層その可能性を強めていると思います。同時にそれは人為的関与の可能性も高めています。僕達の一族は史跡調査やロストロギアの発掘を専門にしているのですが、僕達がロストロギアが発掘したとしても、そいつが早々勝手に動き出すようなことはないんです。もちろん夜天の魔導書のように自発的に動くようなものもあるんですが、大抵はあのジュエルシードみたいに人が手をつけない限り、何か起こすことは無いはずですから」
 「ああ」
 「それとマリエルさん、シグナムさん。リンディ提督に爆心地から半径10キロ以内の調査を行うように求めてくれませんか。ああいった場所にこのような機械が存在するということは近くに何らかの研究所があるかもしれません」
 「ええ」
 「では、今回の件はここらへんでね。後はなのはちゃんに一人付けたいと思うの。一応なのはちゃんのお母さんが付いていてくれるみたいだけど、やっぱりこっちからも一人は出した方がいいと思って」
 「私がやります」
 フェイトが手を挙げる。
 「お前は止めておけ、テスタロッサ
 「どうしてですか」
 「お前は学校に通っているだろう。それを休むな」
 「でも……なのはについていてあげたい」
 シグナムの言葉にフェイトは反発の念を覚えた。何で、どうしてなのはを学校より優先してはいけないのか。
 「それは分かっている。だがもう一つ理由があるんだ。こいつに、ヴィータに任せてやってくれないか」
 シグナムはヴィータの頭に手を置いて言う。
 「……」
 フェイトは答えない。まだ納得していないようだった。
 「私たちは騎士だ。それにも拘らず、なのはに怪我を負わせてしまった。せめてなのはが目覚めるまでは、責務をこいつに全うさせてくれないか」
 シグナムは続ける。
 「あとはテスタロッサ、お前には、なのはがお前に与えてくれた居場所があるだろう。そいつを大事にしてやれ。あいつがくれた新しい日常を、そしてあいつのいる日常を守ってやってほしい」
 「日常……」
 「お前が休んででもいてくれることをなのはは嬉しいと思うだろう。だが同時に申し訳なくも思うだろう。それに、なのははこれで一定期間日常を喪失するんだ。その日常を、なのはの日常をお前が伝えてやってほしい。だから、すまないが、それまではこいつにやらしてくれないか」
 今度はヴィータに向けて語りかける。
 「ヴィータ、お前がいない間は私がお前の分までやっておく。だから、目覚めるまでは遠慮なく看病していろ」
 「分かった。フェイト……あたしにやらせてくれ、なのはを見守る役目を、護る役目をあたしに与えてくれ……頼む……」
 ヴィータが頭を垂れてフェイトに頼み込む。フェイトは頷いて、言った。
 「うん……いいよ、お願いね、ヴィータ
 「ああ、すまない……任された」
 「マリエル。レイジングハートのほうはどうだ」
 「うーん、申し訳ないけどちょっと分からない。レイジングハート自体が修復するのに掛かる時間は大体目途が立っているんだけど、今回のデータを解析して、きちんと修正できるまでにかなり時間が掛かると思う。これはレイジングハートだけの問題じゃなくて、他の魔導士、フェイトちゃんみたいなインテリジェントデバイスにベルカ式カートリッジを組み込んだデバイスを使っている全ての魔導士に関する問題だから」
 「了解した。とりあえずだが、レイジングハートの修復が終わった段階で一度、連絡をくれ」
 「分かったわ」
 シグナムが立ち上がる。
 「私とシャマルは主の元に戻るが、マリエルは途中まで送っていこう。テスタロッサ、お前はどうする。良ければ送っていくが」
 「名残惜しいですけど……、お願いします」
 「了解した」
 「僕はもう暫くここにいてから帰ります。伝えておきたいこともあるから」
 「そうか、では終了だ」
 「ええ」
 一人一人、部屋から出て行く。最後の一人、マリエルが出て扉が閉められる。
 そして、明かりが落とされた。